知る権利とは
知る権利とは、何の妨げもなく個人が自由に情報を受け取るとともに、公権力側に対して情報公開するように請求できる権利をいいます。
表現の自由の内容として、憲法21条1項(集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する)の、表現の自由に保障の範囲にあると解されています。
知る権利を保障する根拠
憲法21条1項が保障する表現の自由は、思想や情報を発表し伝達する自由として規定されています。
ただ、情報の発表や伝達は、送り手のみならず「受け手」の存在を前提としていることから、表現の自由は、知る権利を含めて保障するものと解されています。
メディアが発達した現代社会では、メディアから大量の情報が一方的に流され、情報の送り手と受け手の分離が顕著になり、ほしい情報を何の妨げもなく受け取ることができる必要性は現代社会では必須のものであると考えられます。
そのため、表現の自由を受け手側から再構成し、受け手の自由としての「知る権利」が認められるようになりました。
知る権利の法的性格
知る権利の内容には、①国民が情報を受け取ること国家から妨げられない権利(自由権的性格)があります。
また、②情報を受け取ることによって政治に有効に参加することができるという意味で、参政権的な性格を有します。
さらに、知る権利は、③政府情報の公開を要求できる権利であり、その意味で、国家の施策を求める国務請求権(社会権)的側面も有します。
しかし、政府情報の公開を要求できる権利については、いかなる情報をいかなる範囲で公開すべきかが円滑な行政運営や第三者のプライバシー等の反対利益をも総合的に考慮して決めないといけない部分であり、また、憲法の条文からも権利の具体的な定めがなく、不明確な部分があります。
したがって、具体的立法が無い限りは、積極的に請求できる権利ではなく、抽象的なものであると解されています。
ただ、情報公開法の制定や各地方公共団体による情報公開条例の制定により、具体的な請求権としての位置づけが確立しています。
アクセス権
では、知る権利の内容として、政府だけではなく、メディアに対しても積極的に知る権利の内容としてアクセスをすることが認められるのかも議論となっています。
アクセス権とは、政府情報へアクセスする権利として知る権利と同じ概念として使用されていることもありますが、一般的には、国民がメディアに対して自己の意見の発表の場を提供することを要求する権利の意味に使われることもあります。
具体的には、新聞社に対し意見広告や反論記事の掲載を求めることや、放送事業者に対して番組への参加を求めることなどが挙げられます。
しかし、メディアに対し、一定の作為を要求する権利を憲法から直接導き出すことは困難ですし、アクセス権を認めると、新聞社が反論文の掲載を強制されることになり、批判的記事の掲載を躊躇するようになるなど、かえって表現の自由を侵す危険にもつながります。
したがって、アクセス権は、憲法により保障される権利ではなく、具体的な立法があって初めて認めることができる権利だと思われます(最高裁判例:昭和62年4月24日サンケイ新聞事件)。