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目次
所有権移転登記の事例
今回は、具体的な登記を事例にして、民法177条がどのように機能しているのかについて、まとめてみました。
【具体例】
Aさんは、悪い人に脅されて、Aさん所有の土地を悪い人に贈与し、所有権移転登記手続をしました。
その後、悪い人に対して強迫を理由として贈与契約取消の意思表示をしました。
しかし、Aさんは所有権移転登記の抹消登記手続をすることを忘れて、土地の登記名義は悪い人のままにしてありました。
そこに、これらの事情を知っているCさんが現れ、悪い人からかなり低い代金で土地を買い、所有権移転登記手続を経た後、事情を知らないDさんに対して土地を相当額で売り渡し、所有権移転登記手続を完了させました。
この場合の法律関係は、どのようになるのでしょうか。
贈与契約を強迫により取り消した元の権利者と、背信的悪意者と呼ばれている者から取得した者との法律関係がどうなるのか問題となります。
AのDに対する請求の可否
所有権移転登記の抹消登記手続請求について、AはDに対し、甲土地の所有権に基づく妨害排除請求として、Dの所有権移転登記の抹消登記手続請求をすることができるのでしょうか。
Dは、AがBに対して甲土地を贈与したと主張して、所有権喪失の抗弁を主張することが考えられるます。
これに対してAは、Bによる強迫(民法96条1項)を理由として、上記贈与契約を取り消すことができます。
その取り消しにより、贈与契約が遡及的無効となる結果、Aが甲土地の所有権をなお所有することになります。
取消後の第三者の法的規律
Aにより贈与契約が取り消された後、悪い人がCに土地を売却して登記も移転した場合には、贈与契約の取消しの遡及的無効の効果としてAに土地の所有権が復帰する物権変動がおこることは先ほど述べたとおりです。
その一方で、BC 間でも売買契約によった物権変動も発生してしまいます。そのため、Bを起点とした二重の譲渡の関係が生じたことになります。
この場面について、判例は、民法177条を適用することにより、登記を具備した先後により優劣が決まるとしています(最高裁判例:昭和32年6月7日)。
そのため、Aよりも先にCが所有権移転登記を取得した場合は、Aは土地の所有権を失なったことになります。
民法177条の「第三者」とは
では、判例がいう民法177条の第三者とは、どのような者をいうのでしょうか。
判例は、当事者やその包括承継人以外の者で、不動産に関する物権の取得や喪失、変更ある場合の登記の欠缺を主張する正当の利益を有する者としています。
そのため、単に物権変動があった事実を知っているという立場は、不動産取引の自由競争の範囲内では、通常的な態様で、正常な取引とされており、その取引に関わった者は、登記についての正当な権利を有することになり、民法177条のいう第三者に該当します。
しかし、物権変動の登記の欠缺を主張することが信義に反するほどの背信性あると認められるような者については、もはや民法177条の第三者として保護するに値する者ではなく、背信的悪意者と呼べる者として、登記がなくても、背信的悪意者に対しは、権利を対抗することができるとしています。(最高裁判例:昭和43年8月2日)。
背信的悪意者とは
贈与契約が取り消され、契約に基づく物権変動が無効になったことを知っており、しかも取消しの理由が、強迫であることを知りつつ、元の所有者が所有権登記を回復していないのに便乗し、高値での転売するという目的で、低い代金で土地を買い受け、事情を知らない者に土地を時価相当額で売却したような場合であれば、背信性も認められると考えられます。
その場合には、Aは所有権移転登記がなくても背信的悪意者に所有権の取得を対抗することができます。
背信的悪意者から更に譲り受けた者
では、背信的悪意者から、さらに土地を譲り受けた転得者は有効に権利取得することができるのでしょうか。
そもそも、背信的悪意者は最初から無権利者なのかが問題となります。第1譲受人は、背信的悪意者に対しは、相対的に登記がなくてもその所有権取得を対抗することができることは、先ほど述べたとおりです。ただ、元の所有者との間では無効となるとしても、二重譲渡の起点となる者(今回だとBさん)と背信的悪意者との間の契約も、当然に無効となるものではないとされています。
したがって、背信的悪意者も無権利者ではなく権利者とされています。そのため、背信的悪意者である者も、第一譲受人から有効に所有権を取得しており、背信的悪意者から土地を譲り受けた転得者も、有効にこれを取得したことになります。
背信的悪意者と民法177条
背信的悪意者からの転得者も民法177条の第三者に該当するのでしょうか。
不動産が譲渡され、その登記が未了の間に、その不動産が二重に譲渡され、さらに転得者に転売され、登記が完了した場合に、たとえ第二の買主が背信的悪意者に当たるとしても、第二の買主が背信的悪意者として177条の第三者から除外されるのは、あくまで第一の買主と第二の買主との相対的な関係に照らし、第二の買主が登記欠缺を主張することが信義則に反して許されないことにあるためです。
つまり、第一の買主に対する関係で転得者自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、転得者はその不動産の取得を第一の買主に対抗することができるとしています(最高裁判例:平成8年10月29日)。