民法・民事訴訟

即時取得制度

即時取得とはどんな制度なのか

 即時取得に関する民法の規定は192条から194条まで規定されています。

 即時取得制度の趣旨は、動産を占有している無権利者を真の権利者と思い込んだ人の信頼を保護して、動産取引の安全を確保していく点にあります。

 売主に所有権がないのに、売買契約をしてしまった場合、その所有権は買主に移転することは当然ありません。

 しかし、契約上の義務として、他人が所有する物を売買してしまった売主としては、所有権を取得して買主に移転する義務は負うことになっています(民法560条)。

 動産は不動産と異なり、取引の頻度や種類や数量などから登記や登録をその都度することに馴染みませんし、逐一売主が所有者か否かを確認するのは現実的に不可能な場合が多いです。

 そのため、動産の取引に入った者が、動産を占有している者を正当な権利者であると判断した場合、その信用に基づいて権利を得た者を保護するために設けられた制度が即時取得です。

 動産の占有状態に信用力を与えたことになり、このことを公信力といいます。

即時取得をするための要件

★目的物が動産であることが必要です。

 ただし、動産であっても、登録制度があり登録済みの自動車や航空機や船舶などには、即時取得は成立しません。

    また、金銭は、所有と占有が一致するために即時取得の問題とはなりません。

★有効な取引行為に基づいて動産の占有を取得することが必要です。

 即時取得制度は、あくまで動産取引の安全確保を目的とするものですので、取引行為に基づく占有取得であることが大前提であり、動産の占有というものに公信力を与えているものなので、前の持ち主の行為無能力や意思表示に欠陥がある場合、無権代理行為などの有効ではない取引行為の場合までフォローする制度ではないからです。

★占有取得の形態

占有の取得については、現実の引渡しのほかに、簡易の引渡し、指図による占有移転及び占有改定という占有の取得形態があります(民法182条~184条)。

 簡易の引渡し、指図による占有移転についてはほぼ異論なく即時取得が認められています。

 占有改定については、即時取得を認めるかについては、実務上や学説上において争いがあります。

★その他

 前の持ち主が動産を占有していること

 前の持ち主が動産を占有する権利が無かったこと

 取得者が占有取得時に平穏、公然、善意・無過失であること

 「善意」「無過失」であるとは、前の持ち主が権利者であることを単に知らないだけではなく、権利者であると積極的に信じ、そのことに落度がないことを言います。

 ただ、民法186条1項の定めで「平穏」「公然」「善意」は推定されることになっていますし、「無過失」は、民法186条の定めにより、占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定されるとされていますので、占有取得者は、自己の無過失まで立証するは必要ではなく(最高裁判例:昭和41年6月9日)、単に権利者だと信じたことだけを証明すればいいことになります。

即時取得した場合に発生する効果

 動産についての権利について、以前から持っていたのと同じことになるとされています。このことを動産の権利を原始取得すると言います。

 占有移転を伴う物権であれば、原始取得することができると考えられており、所有権だけではなく、質権についても即時取得ができるとされています。

即時取得ができない例外規定

 即時取得者が取得したことにより、前の持ち主はその権利を失います。

 そのため、前の持ち主には重大な不利益が生じることになるため、取引安全の確保と従前の権利者の保護取引の安全とのバランスを取る必要から、窃盗事件の盗品や落とし物や紛失物に関しては、例外が設けられており、即時取得を制限しています(民法193条、194条)