捜査と公判の関係―公判中心主義―
刑事手続は、基本的に捜査と公判という2つの手続の組合せによって構成されています。
捜査と公判は、刑事事件に関する事実関係の解明を目的とする点では共通ですが、その手続的性格・構造は対照的になります。
すなわち、公判での審理は、公開の法廷において、公平・中立な裁判所の面前で、検察官と被告人の対等かつ同時の参加のもとに行われます。
これに対して、捜査は、その性質上密行性が求められ、捜査機関による一方的な事件調査活動としての性格を持っています。
捜査と公判はともに刑事手続の必須の構成要素ですが、処罰及びその前提となる事実認定の公正性・適正性を保障するには、公判手続が捜査の結果を単に確認・追従する場ではなく、刑事事件の真の決着の場として刑事手続の中核に位置付けられる必要があります。
旧刑訴法の下では、公訴提起とともに捜査資料が裁判所に引き継がれ、公判は、裁判所が、捜査の結果である犯罪の嫌疑を前提として、被告人の関与の下に、真実を発見する場としてとらえられてきました。
これに対して、現行刑訴法は、起訴状一本主義を導入し、公訴提起に際して検察官が捜査資料を裁判所に提出することを禁止(256条4項)し、裁判所が事実認定に用いることのできる証拠に厳格な資格を要求し、公判廷外で得られた供述証拠については、伝聞法則を採用して、証拠として用いる資格を原則として否定(320条1項)ています。
これらの制度の採用により、公判は捜査結果の事後的検討の場ではなくなり、公判が刑事訴訟手続の重要で手続の中心の場面になっています。